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怪談文藝【三題噺スレッド】八百文字
785:軍服 スニーカー 南京玉スダレ 07/18(土) 00:34 [sage]
塀の向こうの屋敷から陽気な歌声が聴こえた。
屋敷の前をうろついていた男はにやりと笑い、身軽にその塀を越えて屋敷へ
忍び込んだ。男は言うまでもなく強盗である。
近所でも噂のこの屋敷は、初老の男性が一人しか住んでいない。
大層な金持ちだが、頭がおかしいため身内の者も寄りつかず、朝晩と
ヘルパーの世話になっているそうだ。
男が歌声のする縁側へ向かうと、初老の主は噂にたがわぬ変わり者ぶりで、
昔自分が着ていたものであろう薄汚れた軍服に麦藁帽子、片足にサンダルといった
いでたちで、南京玉スダレを歌いながら踊っていた。庭先には一列に並べられた
将棋の駒、茶碗や鍋、バケツにスコップ、金槌やらモップやら様々に置かれている。
それらを客と思っているのか、雑多に並べられた物に向かって
歌い踊り、笑っている。
男が近寄ると、初老の主は「おお今日は千客万来だ!」と言って
まるで男を怪しむ様子もない。男が「こんな奴が来て千客万来か」と
鼻で笑うと、初老の主はいよいよ調子を良くした。
「はい、そこの青いスニーカーのお嬢さん、それから長い黒髪の素敵なあなたも
 老夫婦さんも新婚さんも、ああ白衣のあなたはお医者様ですね。皆さん
 どうぞ楽しんで行って下さい!」
男はぎょっとした。初老の主が次々口に出す人間は皆、男の被害者と重なるではないか。
「お客様、たくさんの友人に囲まれて幸せでしょうね」
その言葉に恐ろしくなった男は後ろ手に隠していたナイフも投げ捨てて逃げようとした。
陽気に歌い始めた初老の主は、男が背を向けたとたん、庭先の金槌を握りしめ男を殴り
つけた。「お客様困ります、講演料払っていただかないと」ぐったりした男の衣服から
財布を抜き取ると、初老の主は狂ったように笑った。
1-AA
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