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2chではやらす泣ける長文コピペ
263:10/17(土) 10:06 [sage]
じいちゃんが、最近どうも、ボケた。
朝、やたらと早く起きだして、縁先に座って何かしている。寒いな、と思うと廊下の戸を
あけっぱなしで、座り込んで何かしている。「プラ模型か……」
老眼鏡を掛けて七百分の一スケールくらいの戦艦を組み立てている。
パーツが、艦橋から、ぬるっと転げ落ちる。じいちゃんは接着剤が尽きたので、航行用
のシャフトに封入するチューブ入りのグリスを使っていた。
僕は模型店に行って接着剤を買ってきた。じいちゃんに渡して使うように言う。
「……そうか、そうか」何時まで記憶しているかはわからない。

翌日びっくりした。
じいちゃんは戦艦を見事に完成させていたが、その艦底を糸鋸で切り抜き、舷側に穴を
開けて紐を結び、自分の頭に乗せていた。
その恰好で四六時中居る。外に出かけるときも頭に戦艦を乗せて行く。
恥ずかしいも恥ずかしいが、鬼気迫る様相だ。

監視もあって、家族で手の空いた者がついていく事にした。
その日曜、僕が、じいちゃんのあとをついていった。
奇妙なのは、じいちゃんは、近所の床屋や、食堂や、顔なじみの人達の前では、まともな
やりとりができる。家に居るときのボケっぷりは逆に演技かと疑う位で、ただその頭に
乗せた、戦艦の模型だけが異常だった。

夕方、家に帰る道すがら、ふたりきりになるとじいちゃんは、家でのように、あぶなっかしい
歩き方になった。僕はじいちゃんが転んだら困るので、手をつなごうと横に並びかけた。
夕日が、ななめに僕の眼をつらぬいた。
オレンジ色の光の中、電柱と塀でできた、空に向かう空間に、その幻影は観えた。

「お〜い……××……××……」「……お〜い××……」
僕と、じいちゃんの苗字で、オレンジの海の上、漂う灰色の服の男達が呼ばわっている。
白い歯が観える。笑っているように観える。二十歳前後の若者達だ。波間に浮きつ、沈みつ
している。僕は、何が起こったのか、わからなかった。
「……ああ……」じいちゃんがちいさく声を放った。静かに笑いながら。
「行くよ、ああ、俺も、もうすぐそっちに、征くよ」
1-AA
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